商品管理

私たちは花を専門に扱う業者です。商品である切花や鉢物にかかる知識の習熟はもとより、商品管理を確実に行うことが基本的な責務と考えます。そして、商品管理の基本を次のように考えます。

1.個々の商品を確実に識別し、事後であっても取引の過程を追跡できること
2.鮮度保持に心がけ、必要な施設を整備し、必要な対策を講じること
3.検品を行い、傷みや病害虫のない商品を顧客に届けること

1.はトレサビリティーを確保することと言い換えられます。
それを実行するために、コンピュータによるデータ管理システムを構築し、また細やかに商品を認識するための商品コード(FAJコード)を整備・維持しています。
2.においては、卸売場の一部を空調し、商品の特性に応じた置き場管理を行っています。
3.では入荷時に検品を行います。

トレサビリティーを支えるFAJコード

確実なトレサビリティーを確保すること、小売り業者やその先にいる消費者にできるだけ詳細な商品情報を伝えたいという願いから、弊社はもっとも詳細な商品コード「FAJコード」を作成し、維持しています。FAJコードは1990年、大田市場花き部が開場したときに作成し、現在10万を超える品種が登録されています。
毎年数千に及ぶ新品種が登場する花き類では、商品コードの鮮度を保つために、日々の追加・修正が必須となります。弊社では、専門のスタッフを配置し、新品種の入荷をチェックし、直ちに新たなFAJコードを作成する体制をとっています。
このように、細かなコード体系と日々のメンテナンスにより、各商品の取引をデータ処理しています。過去に1鉢でも取引された商品は、出荷者や販売先、販売日や価格などを調べることができますし、顧客から「何々を探して欲しい」といった問い合わせも瞬時に対応できるのもFAJコードがあるからです。
いっぽう、弊社は1994年に公表された日本花き取引コード(JFコード)の調査・策定に参加し、公表した後も弊社において追加・修正等のメンテナンスを行い、現在は日本花き取引コード普及促進協議会および(社)日本花き卸売市場協会から委託を受けて、そのメンテナンスを継続しています。JFコードは現在7万以上を収録し、国内10数市場で利用されており、花き業界の標準コードとして定着しつつあります。JFコードの詳細は、JFコードセンターを参照のこと。
ちなみに、FAJコードはJFコードとほぼ完璧に紐付けされ、JFコードによる統計情報や販売データ等の提供が可能になっています。

卸売場の温度管理

市場流通においては、商品が生産者の温室を出てから店頭に並ぶまで、ふつう2~3日を要します。流通途中はトラックの中や市場の卸売場にストックされます。トラックの中は多湿で光もなく、また卸売場も光は弱く水やりもされません。商品(植物)にとって好ましい環境とはいえません。
しかし、流通途中の環境はコントロール可能なものと考えています。トラックの庫内、そして卸売場は温度管理を行うことが必要で、そのことにより流通途中の鮮度は保つことができます。私たちは温度管理を行う範囲を順次拡大し、現在、卸売場全体の7割以上が温度管理されています。私たちが扱う商品は低温性の植物から高温性の植物までが混在しますが、商品の特性に応じて置き場を選び、ストックしています。

定温倉庫
オランダの花き市場は、商品をストックする卸売場のすべてを完璧に温度管理しています。大田市場花き部はそれを見ならい、地下に定温倉庫を装備しました。それまで日本の花き市場は温度管理を行う卸売場はなく、商品の鮮度や品質の劣化を防ぐために定温倉庫が必須であると、大田市場花き部の開設者(東京都)に訴え続けたことで設置されました。
湿度管理が可能で、切花の繁忙期には一部を冷房し、商品のストックに使います。また、地下にあることから1年を通して温度変化が小さく、コチョウランを初めとする高温性の洋ラン鉢物は定温倉庫に保管しています。

FAJ新館
弊社は卸売場の不足を補うため2004年に3階建てのビル『FAJ新館』を建設しました。その2階と3階のフロアは入荷物をストックのための卸売場ですが、鮮度の劣化を防ぐ目的から空調設備を備えました。温度設計は外気温±10℃を限界に、冷暖房を行うものです。
切花をストックするほか、鉢物では鉢花や観葉植物をこのエリアにストックします。

大田市場花き部北棟
大田市場花き部に隣接する敷地に立てられました。当社が使用するエリアは大きく3つに区切られ、切花のリパック作業スペースとリパックされた商品をストックするスペースは空調しています。さらに、段ボール箱入りで入荷した切花を保管する冷蔵庫が完備されています。

検品

生産者が心を込めて生産した切花や鉢物、それが市場に届いたとき、個々の商品に出荷情報や予約相対情報を印字した荷受ラベルや予対ラベルを添付します。多いときは1日に1万口を超える入荷があり、出荷情報を正確に入力することはもちろんのこと、間違いなくラベルを貼付することが必須です。しかし、データ入力もラベル貼付も人が行うことですから、当然のこと間違いがあります。検品は、その間違いを事前に発見し、販売のミスを防ぐために行われます。
また、検品は傷みや病害虫の有無、花の老化(咲きすぎ)等をチェックすることをもうひとつの目的としています。傷みや病害虫が発見されたとき、ひどい商品は販売せず、また多少なりとも商品価値があると判断されたときは、その旨を伝えて販売します。

市場においては、この検品の精度を上げることが重要です。弊社では、入荷時と販売時に検品を行い、また検品に必要な知識の集積および社員の能力向上を目指しています。そのひとつが、病害虫速報の作成・周知です。病害虫やその症状を写真に撮り、荷受や販売を担当する社員に配布することで、注意を喚起するとともに病害虫を識別できる目を養います。