コンプライアンス(法令遵守)は企業の持続的な発展を目指すための前提条件、必須の責務です。
会社法等の商法関係、労働基準法や労働安全衛生法等の労働法関係、リサイクル法等の環境法関係など様々な法律を守ることは当然の義務と考えます。加えて、私たちは東京都中央卸売市場大田市場花き部に入場する卸業者という特殊性から、卸売市場法や東京都中央卸売市場条例など市場法関連の法律を遵守することが求められています。農林水産大臣から認可を頂いて営業を行うことから、農林水産省の定期的な検査を受け、また開設者である東京都の検査も受けており、指摘事項があれば迅速に対応しています。
また、私たちは花やみどりを専門に扱う企業です。その特殊性に由来する守るべき法律があります。主なものは種苗法等であり、私たちは以下の通りに対応致します。
1.種苗法(育成者権の保護)
新品種の育成者に与えられる権利(育成者権)の保護を主な目的にした法律です。特許法や実用新案法、商標法と同じく、知的財産権を保護する法律で、種苗登録申請が出された時点で新品種の育成者権が生まれ、審査の結果、登録公表されることで育成者権が確定します。そして、それらは育成者の許諾なく繁殖することが禁止されることになります。
花き市場では、この育成者権を侵害すると推測される商品が入荷したとき、出荷者に確認するとともに、必要に応じて育成者権の所有者に通知いたします。
2.種苗法(農薬使用履歴の表示義務)
種苗法では、指定種苗を卸売りするとき、また小売りするときに、その業者は農林水産大臣に対して種苗商の届出を義務化し、また農薬の使用履歴の表示を義務づけています。
指定種苗とは、食用となる全種類および花き類の一部において、その種子や苗を指しています。具体的には、野菜苗のすべてに加えて、チューリップ、ユリ、スイセン、アマリリスなどの球根、カキやブドウ、モモ、キウイ、柑橘など15種類の果樹苗、キクやマーガレットなどの苗、ツバキやボタンの苗木、バラの苗木と穂木のように指定されています。詳細は、次ぎのサイトを参照してください。
弊社は、まず種苗商の届出を行うとともに、野菜苗等が入荷したとき、農薬履歴の有無をチェックしています。もし、農薬履歴の表示がないときには出荷者に連絡し、また顧客から農薬の使用履歴の問い合わせがあったとき、出荷者に確認してお答えしています。加えて、ラベル印刷のプログラムを作成し、無償提供しています。
3.外来生物法
正式には「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」です。
一般には、外来生物法または外来生物被害防止法と呼ばれます。
日本の生態系や人、作物などに対して被害を及ぼす生物、またはその可能性がある生物の輸入や販売を制限する法律です。まず、国は諮問機関の検討により、それらの生物を特定外来生物に指定します。そして、それらがすでに国内で野生化しているとき、駆除を目指すことも定められています。植物では、第一次の指定において、ナガエツルノゲイトウ、ブラジルチドメグサ、ミズヒマワリの3種が指定され、第二次指定ではアゾルラ・クリスタタ(アカウキクサの一種)、オオフサモ(パロットフェザー)、アレチウリ、オオキンケイギク、オオハンゴンソウ、ナルトサワギク、オオカワヂシャ、ボタンウキクサ(ウォーターレタス)、スパルティナ・アングリカの9種が指定されました。三次指定で植物は指定されていませんが、今後も追加指定がなされる見通しで、今後も増えるものと推測されます。
詳細については、次ぎのサイトを参照してください。
なお、弊社は、指定された特定外来生物は販売せず、もし入荷があったときには出荷者に連絡をして、出荷を取りやめるようお願いしています。
4.種の保存法(ワシントン条約)
ワシントン条約の名前は聞いたことのある人が多いと思います。正式名称は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」で、1973年ワシントンで採択されたことからワシントン条約と呼ばれています。日本は1980年11月4日に締約国になりました。正式名称にあるように、絶滅のおそれがある動植物の国際取引を規制することで野生動植物の保護を図るというものですから、国内の生産や流通を直接制限するものではありません。
代わりに国内法として整備されたのが「種の保存法」です。正式には「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」です。平成5年(1993年)4月1日に施行され、国内外の絶滅のおそれのある野生生物を保護することを目的にしています。この法律では、まず絶滅のおそれがある動植物を希少野生動植物として指定します。それに指定された動植物は、必要によって保護増殖事業計画が策定され、実行されます。また、原則、販売や頒布目的の陳列は原則禁止、購入や譲り受けも禁止されます。希少野生動植物には国内の野生種(国内希少野生動植物種)と海外の自生種(国際希少野生動植物種)があります。前者は環境省が公表するレッドデータブック、後者はワシントン条約附属書Ⅰにリストされた動植物を指定しています。
植物では、国内希少野生動植物種としてアツモリソウなど19種を指定し、そのうちアツモリソウ、ホテイアツモリ、レブンアツモリ、アマミデンダ、キタダケソウ、ハナシノブの6種は増殖技術が確立しており、人工増殖された個体は条件付きでの販売が許可されています。これらを特定国内希少野生動植物種と呼びますが、6種のいずれかを販売する人は所定の届出を国に提出(特定国内種業者の登録)が必要であり、その業者は仕入れ先など取引の記録を残す義務が生まれます
詳細については次の環境省のホームページを参照してください。
弊社は、国内希少野生動植物種および国際希少野生動植物に指定された植物について、その販売は致しません。また特定国内種野生動植物種については、セリおよび相対による販売は致しません。それは、販売先が上記の特定国内種事業者である必要があるからです。また、入荷があったときは、出荷者が特定国内主事業者であるかどうかを確認いまします。
5.麻薬及び向精神薬取締法
麻薬などを取り締まる法律で、その中でその原料となりうる植物の栽培や取引等を禁じています。具体的にはケシなどケシ属の一部やタイマ(大麻、当麻)コカ(コカノキ)などです。ただ、大麻もケシもその種子は麻薬成分を含まず、除外しいます。おそらく種子そのものは七味唐辛子や鳥の餌、アンパンの上にあるつぶつぶ(これはケシの種子)などに利用されています。種子の所持や販売は法律に触れませんが、発芽させると法律の対象となります。
米国などはケシの栽培を禁止していません。その種子は普通に販売されています。海外旅行のお土産に、またネット販売などにより、知らずに持ち込み、栽培されることがあります。
ちなみに数年前のこと、ケシの鉢植えが間違って流通したことがありましたが、弊社はケシなどの取引をお断りするとともに、市場に出荷があったときは速やかに警察へ連絡いたします。
6.たばこ事業法
昭和59年に、それまでのたばこ専売法を廃止して制定された法律です。
その第2条に、たばことはタバコ属(Nicotiana)の植物を指し、その葉を葉たばこと呼び、葉たばこをもとに喫煙用の製造されたものを製造たばこと呼ぶと定義しています。たばこ専売法では、たばこの栽培そのものを禁止していました。たばこ事業法では、たばこの栽培それ自体を禁止する条文がなくなり、昭和59年以降、タバコ属のハナタバコ(N. alata)やその交雑種N. x sanderae、同属のN. sylvestris、N. langsdorfiiなどの栽培が広がり、鉢植えや花壇苗として市場にも登場するようになりました。
では、タバコ(Nicotiana tabacum)の栽培は許されるのでしょうか。葉を採って加工し、喫煙に供することは法律で禁止していますが、条文を読む限り、栽培そのものは法律違反にならないと判断できます。そして、その鉢植えはハナタバコなどが許されているように問題はないように見えます。ただ、それを購入した消費者がたばこに加工して喫煙する可能性があり、違反者を生む可能性がある取引は行うべきでないと思います。
今まで、タバコの鉢植えやポット苗が入荷したことはありませんが、もし入荷したときは行政と相談して対応を定めることに致します。