CHAPTER 4 – 市場流通の課題と将来展望

3. 情報化の進展

インターネットの普及を始め、ここ数年の情報機器、情報システムの発展はめざましいものがありますが、その波は花き市場にも及びつつあります。
業界における情報化は、納品書や請求書の発行など、事務処理系が中心でしたが、最近はホームページなどによる情報公開が進む一方で、注文の受発注や先取りの申し込みなど、情報システムを介した取引(情報取引)の分野に進みつつあります。

明日のセリに何が入荷しているか、インターネット経由で検索でき、欲しいものがあればその場で先取りの申し込みが行われ、あるいは過去の取引を参照して注文発注をするといったシステムです。現在はいずれのシステムも試行の段階ですが、近未来には重要な取引手法になると思われます。

4. 国際化

花き類における輸入が拡大し、認知されるようになったのはここ20年ほどのことですが、1990年、大阪の鶴見緑地で「国際花と緑の博覧会」が開催された頃を境に、切り花や球根類の輸入が急増することになりました。その理由は、1990年の植物防疫法の部分改正です。

つまり、球根類における隔離検疫の条件付き免除と事前検疫制度の導入です。
事前検疫制度は、日本の検疫官が輸入相手国に常駐し、対日輸出の前に病害虫などの有無をチェックする仕組みです。
隔離検疫の条件付き免除は、従来、輸入球根は隔離圃場で一作し、病害虫のチェックを義務づけていましたが、対日輸出をしようとするものを生育中にその国の圃場でチェックし、合格したものについては隔離免疫を免除しようというものです。

この制度に対応するのは、過去も現在もオランダのみですが、そのオランダからは1990年以降に切り花と球根の輸入が急増することになりました。
特に球根においては年々増え続け、今では国内で利用される球根はその7割(金額比)がオランダ産という状態になり、国内の球根生産額はピーク時の6~7割に減少しています。

いっぽうの切り花は、’90年代前半は半ばに訪れた1ドル=80円台を目指すという円高基調を背景にして大きく伸び、特に事前検疫制度を導入したオランダからの輸入が急拡大して輸入相手国の第一位にオランダが登場することになりました。

’90年代後半は円安基調にあることと国内の消費低迷が重なり、切り花輸入額は横這い状態に陥っています。しかし、’90年代後半の輸入切り花は輸入相手国の構成に大きな変化が見られました。

輸入額第一位に躍り出たオランダからの輸入が減少する一方で、アジア各国、それも中国、台湾、韓国からの輸入が急増しています。
また、輸入される切り花も、新品種や国内生産が少ないものが中心でしたが、バラを初めとする、国内の主力品目の輸入が増える傾向が顕著になっています。すなわち、’97年頃にはインドからバラの輸入が急拡大し、年間で1千万本を超え、’98年以降は韓国からバラの輸入が増えて2000年には2千万本を超えています。

このように、従来の切り花輸入は日本のマーケットの隙間を埋めるように増えてきましたが、最近の輸入は国内生産と競合する分野に及びつつあり、市場流通を含めて、激動の時代を迎えると推測されます。

文責者 物流本部 取締役 長岡 求

<参考文献>
浅田藤雄編「花卉流通要覧」(株)花卉園芸新聞社/昭和44年
湯尾敬治記録「世田谷の園芸を築き上げた人々」城南園芸柏研究会/昭和45年
卸売市場法研究会編集「卸売市場法の解説」大成出版社/1987年
愛知県園芸発達史編さん会編集「愛知県園芸発達史」愛知県園芸発達史編さん会/昭和56年
花卉園芸新聞社編集「花と緑の三〇年」(株)花卉園芸新聞社/1990年
「横浜植木株式会社百年史」横浜植木株式会社/平成4年
「戸越農園の歩み」三井戸越会/平成6年
「園芸文化 No.120(96年春号)」(社)園芸文化協会/1996年
花卉園芸新聞社編集「花市場のすべて」(株)花卉園芸新聞社/1997年
(財)日本花普及センター編「’99フラワーデータブック」(財)日本花普及センター/1999年