Primula farinosa&P. integrifolia

2014 年 8 月 4 日

Primula farinosa
Primula farinosa

Primula integrifolia
Primula integrifolia

今回のツアーで観察されたPrimulaは花が咲き終えた株がいくつかありましたが、開花していたのは2種類のみでした。

一種はP. farinosaです。farinosa(=粉質の)の種名がある通り、葉や花茎、蕚は粉を吹いて白く見えます。葉は群落によって粉を吹いていないこともあり、ピレネーで見たのは緑色の葉を持つタイプでした。花茎長10~15㎝の小さな花ですが、湿り気がある土地に群生して、よく目立ちました。スコットランド、ピレネー、スウェーデンからブルガリアの山岳地に分布します。

もう一種はP. integrifoliaです。多肉質の葉は葉縁に無色(白色)の繊毛が目立つ(毛縁)ことで同定できます。中央アルプスとピレネーの中央部と東部に分布します。

Gentiana verna

2014 年 8 月 3 日
Gentiana verna (in Pyrenees)

Gentiana verna (in Pyrenees)

Gentiana verna (in Bulgaria)

Gentiana verna (in Bulgaria)

リンドウ科の最後はGentiana vernaです。verna(春の)の種名の通り、春咲きのリンドウです。今回は1株しか見ることが出来ませんでした。もう1カットはブルガリアで撮影したものです。数種の変種がありますが、どの変種に当たるのか、そこまでは調べていません。

Gentiana lutea

2014 年 8 月 3 日

Gentiana lutea
Gentiana lutea

Gentiana punctata (in Bulgaria)

Gentiana punctata (in Bulgaria)

これはピレネー最後の日に訪問した牧場の写真です。Gentiana luteaは欧州で薬草として利用されてきたことで知られるように、有毒植物です。牛はこの草を食べずに残しますので、群落が形成されます。

黄色のリンドウと言えば、欧州にはもう一種が分布します。G. punctataです。この写真はブルガリアで撮影したものですが、ピレネーではお目にかかれませんでした。

 

Gentiana lutea

2014 年 8 月 3 日

Gentiana lutea (2)

Gentiana lutea (2)

Gentiana lutea (1)

Gentiana lutea (1)

アコーリス(Gentiana acaulis)以外のリンドウもピレネーで見ることが出来ました。ひとつは黄色のルテア(G. lutea)です。検索表で見ると、花冠裂片が萼筒より長いという特徴をもつ唯一の種で、検索表の1行目に出ています。写真(2)は花の谷と呼ばれる場所に群生する状態です。それは感激しました。

Gentiana occidentalis ?

2014 年 8 月 3 日
Gentiana occidentalis ? (1)

Gentiana occidentalis ? (1)

Gentiana occidentalis ? (2)

Gentiana occidentalis ? (2)

この2カットは緑点が目立ち、もっともGentiana acaulisらしいと感じた群落の写真です。
ですが、写真(1)の左上のピンぼけの花を見ると、萼歯が長く、三角形(triangular)のように見えました。それならば検索表の最初の3にあるG. clusiiです。しかし、G. clusiiはピレネーに分布せず、欧州アルプスからカルパチア山脈に分布することが判りました。よく見ると、確かに長い萼歯を持っていますが、その形は披針形と見てよいようです。
検索表4に進みます。緑点が顕著ですから、そのまま進めばG. acaulisに落ち着きますが、萼歯はふつう萼筒長より短いとあり、その部分が当てはまりません。そこでもう一つの4以下に進み、6の2種のいずれかに当てはまるかどうかのチェックをします。萼歯の長さではG. occidentalisに、花冠裂片の形状からはe;acuteというよりd;acuminateに、つまりG. dinaricaです。そこで関係する種類を更に調べましたが、いずれもぴったり当てはまりませんでした。
以上のように、検索表はときに万能でありません。記載も同様です。Flora Europaeaをよく読むと、G. acaulis groupの中には、どちらとも判断できないものがあり、それはたぶん交雑起源だろうと書いてあります。以下は私見ですが、これはG. occidentalisというよりもG. acaulis x G. occidentalisだろうと推測します。ピレネーで撮影した中で、一番花が大きく、美しかったのがこの群落でしたが、種間交雑による雑種強勢ならばそれも納得できます。

Gentiana acaulis

2014 年 8 月 3 日
Gentiana acaulis

Gentiana acaulis

正直に言えば、撮影するときは最初すべてがGentiana acaulisだろうと思っていたのですが、途中からいくつか違うものがあるのに気付きました。
検索表に戻って、3ではcalyx-teethの形状がどうのこうのと出てきます。萼の筒状になった部分を萼筒(がくとう/calyx tube)、分かれた部分を萼裂片(calyx lobe)と呼ぶのですが、その裂片が小さいときにcalyx teethとteeth(歯)の単語を使い、日本語では萼歯(がくし)と呼びます。
専門用語の解説はこれくらいにして、3では萼歯が三角形なのか披針形から倒卵形なのか、そして三角形の場合はその長さが萼筒長の1/2以上あるとも添えています。上の写真をよく見ると萼歯はそれほど長くなく、披針形のように見えます。そこでG. clusiiを選ばず次の4のキーに移ります。つまり、G. acaulisG. ligusticaのどちらかに絞り込まれました。
5では萼歯の長さと花筒裂片の形状を見分けのキーワードにしています。G. acaulisの花筒裂片はacute or cuspidate、G. ligusticaの裂片はacuminateです。言葉で説明するより、次のURLに飛ぶと、その三つの単語に対応したイラストが並んでいます(イラストのd, e, f )。
私の写真をよく見ると、e;acuteで良さそうですね。以上で、写真はGentiana acaulisと判断されます。記載をチェックすると花筒部は末広がりのラッパ型とありますので、それもOKですね。

Gentiana angustifolia

2014 年 8 月 3 日
Gentiana angustifolia (1)

Gentiana angustifolia (1)

Gentiana angustifolia (2)

Gentiana angustifolia (2)

Gentiana acaulis groupの続きです。前にアップした検索表をもとに、今回のピレネーで撮影してきたリンドウの同定をしました。

まず、G. alpinaですが、葉の長さは幅よりわずかに長いことが最大の特徴です。それに相当するものはありませんでした。検索表の2.は葉形で枝分かれしています。最初の2.は線状倒披針形または披針形ならばG. angustifoliaで、披針形や長楕円形、倒卵形ならば次の選択肢に進みます。oblanceolatelanceolateの違いはobという接頭語があるかどうかで、日本語ではのひと文字で表しています。次に見えるobovate(倒卵形)からob-を取り除いたovateは卵形です。ob-と倒は、上下(基部と先の方)が逆になったときに付く接頭語です。つまり、卵形といえば、葉身の基部側に最大幅の部分があり、倒卵形は葉身の半分より先に最大幅の部分があるものです。

上の写真はG. angustifoliaと同定したものです。花はスリムな筒型で、花冠内側上部に僅かに緑色の斑点があります。そして、花の下にこのグループとしては長めの茎が見えます。種の説明文と比べて違和感もありませんから、この学名で良いと判断します。

Gentiana acaulis group

2014 年 8 月 1 日

ひさしぶりにですが、先月、ピレネー山を訪れましたので、その報告を兼ねてアップします。7月8日から7月16日までピレネーを散策するツアーを企画し、行ってきました。山に入ったのは正味5日ほどですが、その間に1700カットほどの写真を撮影し、帰国後に全種の学名を調べました。その結果、185種ほどがありました。中には調べるのに苦労したものもあり、まだ自信が持てないものもあります。これから随時紹介しようと思います。

最初は、同定に一番苦労したリンドウ、Gentiana acaulis周辺のものです。現地の図鑑を見ると、よく似ているのに違う学名が付いているものがいくつかあります。見分けの方法が判らず、欧州のフローラ”Flora Europaea”をひも解いてみました。それによれば、G. acaulis groupとして8種をまとめ、植物学的にはそれらはG. acaulisにまとめ、8種は亜種や変種にまとめるべきかもしれないと書いてあります。また、ふたつのTAXON(分類群)の中間の形質を示すものもあり、交雑由来の群落もあるともあります。その検索表を入力したものを次に示します。

Identify of Gentiana acaulis group

1 Nature rosette-leaves scarcely longer than wide 19  alpina

1 Mature rosette-leaves at least 1&1/2 times as long as wide

2 Mature rosette-leaves linear-oblanceolate to oblanceolate   21  angustifolia

2 Mature rosette-leaves lanceolate, elliptical or obovate

3 Calyx-teeth triangular, widest at base, usually more than 1/2 as long as the tube 15  clusii

3 Calyx-teeth lanceolate to obovate, narrow at base

4 Corolla with green spots in the throat; calyx-teeth usually less than as long as the tube

5 Calyx-teeth about 1&1/2 times as long as wide; corolla-lobes acute or cuspidate 18  acaulis

5 Calyx-teeth little longer than wide; corolla-lobes acuminate 17 ligustica

4 Corolla nearly or quite without green spots in the throat; calyx-teeth usually at least 1/2 as long as the tube

6 Calyx-teeth usually more than 1/2 as long as the tube;corolla-lobes acute 16  occidentalis

6 Calyx-teeth about 1/2 as long as the tube; corolla-lobes acuminate 20 dinarica

以上の検索表では、1) mature leaves (成熟した葉の形状)、2) Calyx-teeth (蕚筒裂片の形状)、3) 花冠内側の緑点の有無がキーワードに使われています。

『ピレネーの』を意味するpyrenaicaの種小名をもつGentianaもあるのですが、今回、私の撮影した中にはありませんでした。次の写真はブルガリアで撮影したものですが、5枚の花冠裂片の間に5枚の付属体があり、それが花冠裂片とほぼ同じ大きさになるものです。G. acaulisとは容易に識別できます

Gentiana pyrenaica

Gentiana pyrenaica

マッソニア sp.

2014 年 1 月 13 日
Massonia sp. ex Addo (M. echinata ?)
Massonia sp. ex Addo (M. echinata ?)

 2006年にShilverhill Seedsからエキナータ(Massonia echinata)として入手したもので、これまで幾度かその名前でアップしています。しかし、その名前は間違いだと思うようになりました。

 では何?となりますが、Pacific Bulb SocietyのPhotographs and InformationにあるAddo(南アフリカ連邦共和国の北西部)産のものと同じと判断できそうで、写真のキャプションの通りの表記にしました。Massonia属は以前も書いたように分類がハッキリしておらず、現実に新種が次々に登場しており、分類が整理されるのを待つしかありません。それまで、できるだけ産地名のあるものを入手するように心がけるべきでしょうね。

マッソニア・ヤスミニフロラ?

2014 年 1 月 13 日
Massonia sp. (M. jasminiflora?)

Massonia sp. (M. jasminiflora?)

 国内の業者からヤスミニフローラ(M. jasminiflora)として購入したもので、ちょうど一年前にその名前でアップしました。

 しかし、芳香があるものの花筒部は花被の2倍以上の長さがなく、この名前は間違いだと感じています。開花期は先ほどアップしたヤスミニフローラに比べて3週間ほど遅く、次にアップするマッソニアと花期が同じで、花形や葯の色、無毛で光沢がある葉などもそれに似ています。どちらかといえば、それに近いように思います。

 また、http://www.plantillustrations.org/taxa.php?id_taxon=10481&lay_out=1&hd=0&group=0 にあるMassonia lanceifoliaのイラストが最も近いと思います。下に全体像の写真を追加します。lanceifolia(=lancifolia)は英語ではlance-shaped leaves、直訳すれば『槍型の葉をもつ』となります。他の植物では、Hosta lancifolia(さじギボウシ)、Calathea lancifolia(以前、インシグニスと呼ばれていたもの)などがあり、それらの植物の葉型を思い浮かべていただければlanceifoiaの命名も納得できると思います。が、ですが、M. lanceifoliaの学名は認められていない学名のようです。ここでは、ひとまずMassonia sp. としておきます。

Massonia sp. (M. jasminiflora ?)

Massonia sp. (M. jasminiflora ?)